なぜ、士業事務所のホームページ・ウェブサイトは相談や業務依頼などの反応を得るものと、そうでないものに分かれてしまうのでしょうか。
端的に言ってしまえば、それはウェブサイトに訪問者の反応を引き出せる要素が一定数揃っているかどうかに尽きるのですが、文章でさらっと書いてしまうとあまりに漠然としてしまいます。
日々ウェブサイトを運用・改善する場面では「なんとなく」で捉えてしまい、何がどうなると反応が引き出せるのか、よくわからなくなってしまうことも多いでしょう。
今回はこのあたりのモヤモヤをもう少しイメージできるよう、図などを使って具体的に説明してみようと思います。
ウェブサイトを構成する要素に分解して考える
まず「反応のあるウェブサイト」と「反応に乏しいウェブサイト」とを、ウェブサイト全体を大ざっぱに把握して比較しようとしても分かりにくいので、いったん士業さんのウェブサイトを構成する要素ごとに分解します。
通常、士業事務所のウェブサイトは、以下のような要素に分解することができます。
- 全体の雰囲気・色使い
- ヘッダー(上部のメイン)画像
- ヘッダー画像内のキャッチコピー
- トップページの構成
- 士業さんの写真
- 記事(ページ)の内容や流れ
- 記事(ページ)の数
- 電話番号案内やお問い合せフォーム
- 事務所案内
- 安心要素(お客様の声など)
たとえば、最初に挙げた「全体の雰囲気・色使い」という要素。ウェブサイトを作った経験が乏しいまま自力で構築した場合、「全体の雰囲気・色使い」についてはよほどウェブ営業のセンスが鋭い人でない限り、一定程度以上には達しないはずです。
これを図で表すなら、以下のようになります。
緑の①が「全体の雰囲気・色使い」です。上に行くほど「反応を引き出すための及第点」(依頼につながりやすいレベル)に近づきますが、この例では「全体の雰囲気・色使い」は及第点ラインまで至っていません。
続けて「ヘッダー画像(上部に配置するメインの画像)」「ヘッダー画像内のキャッチコピー」等の他の要素も仮に並べていきます。
たとえば、②の「ヘッダー画像」は比較的良いものを作ることができ、さらにはその画像内に配置した③の「ヘッダー画像内のキャッチコピー」が、ビギナーズラックも手伝ってかなり良い出来で最初から及第点ラインを超えたものの、他の要素は1つも超えることができなかったと仮定するなら、その時点でのウェブサイトは以下のようになります。
ウェブサイトを作り慣れないうちは、なかなかそれぞれの要素が及第点ラインを超える域まで達しません。そのため、反応率が低く、全く問い合わせの電話が鳴らないか、1ヶ月に1本鳴るかならないかといった状況に陥ります。
及第点ラインを超える要素を増やす
上記のように作り立てホヤホヤの士業ウェブサイトは、及第点に達する要素に乏しいのが普通です。そのため、相談や問い合わせの数を増やすためには、どれだけ及第点ラインを超える要素を増やせるか、及第点を超えるように育てることができるかが問われることになります。
とはいっても、仮にウェブサイトを構成する要素が10個あるとしたら、その10個すべてを及第点以上に持っていくことはかなり難しい、というよりも通常そこまでのクオリティは不可能です。そのため、ウェブサイトを育てる感覚としては「全部を及第点ラインへ」ではなく、「できるだけ及第点を超えるものを増やす」「半分以上の要素は及第点をクリアするウェブサイトに持って行く」というイメージで捉えていただくほうが近いです。
たとえば記事を毎週コンスタントに追加していくと、通常、それに伴って次第に訪問者が増えていきますから、⑦「記事の数」という要素はいつしか及第点ラインを超えるようになるでしょう。
危険ライン以下の要素は1個も無くす
ところで、最初の図から一番下に「危険ライン」というものを表示していたのに気づかれたでしょうか。
先ほど、ウェブサイトを構成する要素が10個あるとしたら、10個全部を及第点以上に持って行くのは至難であり、できるだけ多く及第点に持って行くというイメージを紹介しました。つまり、及第点ラインは「できるだけ」超えることが望ましいものであり、すべてを及第点に持っていかなくても、全体としては反応率の良いウェブサイトに仕上がるわけです。
できる範囲でがんばる、という意識で対応することでも、なんとかなります。
他方、危険ラインのほうはウェブサイト構成要素のうち1個でも下回るものが出ると、それだけで反応率はほとんどなくなるか、場合によっては皆無になってしまいます。いわばデッドラインです。
士業さんの場合は資格試験にたとえて、「それぞれの科目は相対的に一定点数以上を超えているものが多ければ合格に繋がるものの、1つでも足切りラインを下回る科目があると、それだけで不合格が確定する」と説明したほうが実感が湧きやすいでしょうか(これは余談ですが)。
危険ライン以下の要素があると、その時点で反応は(ほぼ)無くなる
先ほど、⑦のページ数を増やして及第点ライン超えしたと仮定しましたが、その増やした記事の内容や流れが的外れであると(つまりウェブからの相談・業務依頼へ至る方向性を持っていないものであると)、⑥「記事の内容や流れ」が危険ラインを下回ってしまいます。
結果、いくら③「キャッチコピー」や⑦「記事の数」が良くても、全体として反応率のほぼないウェブサイトと化してしまいます。
なぜなら、いくらアクセス数を増やしても業務を依頼する可能性のほぼゼロの訪問者が大半を占めてしまうからです。(たとえば、ウェブサイト訪問者の依頼可能性に基づく4区分などを参照)
1個でも危険ラインを下回ってしまうと、それがすべてをぶち壊して反応率に乏しいウェブサイトとなってしまう。
これもまた、「記事を追加しても画像を変えても、全然反応ないよ」というウェブサイトの原因になります。何らかの要素が危険ラインを下回っているため、他の要素をいくら修正したり充実させても、ほとんど反応率向上には繋がらない状況に陥ってしまうのです。
危険ラインを下回りやすい「危険な要素」
そして、各要素には危険ラインを下回りやすいものと、そうでないものがあります。たとえば①の「全体の雰囲気・色使い」などは、錆色や血の色、暗い色を多様すると一気に危険ラインを下回ります。
もっとも「全体の雰囲気・色使い」は、よほどのことがない限り、士業さんご自身が制作途中や完成直後に「なんか雰囲気が暗いな」と気づいて修正するため、実際に危険ラインを下回ることは稀でしょう。
逆に士業さんが気づきにくいにも関わらず、危険ラインを下回りやすい怖い要素は、②ヘッダー画像、⑤士業さんの写真、⑥記事の内容や流れあたりです。
ヘッダー画像はウェブサイトを訪問した際、最初に目に飛び込んでくる要素ですから、ここが危険ラインを下回ってしまうと、他で挽回することがまず困難です。
また士業さん自身の顔写真は、とても大きなウェブサイトの構成要素です。円自体が他より大きく、少し下がるとすぐ危険ラインに抵触してしまうようなイメージです。
最終的に誰に相談するか、あるいは電話をかけるかかけないかで迷う訪問者さんにとって、「厳めしい顔」「怖そうな顔」「笑っていない顔」「押しが強すぎる写真(サイズや配置)」は、それだけで「なんだか怖そう」と敬遠されて反応に繋がらなくなります。
腕を組んでいる写真は、基本的に相手に対して拒絶となりますので、士業さんの画像がメインに押し出されている構成なら使うのを避けましょう。
まとめ
以上をまとめると、反応のある士業ウェブサイトを作るためには、
- 及第点ラインを超える要素を着実に(地道に)増やす
- 危険ラインを下回る要素は1つもない状態にする
この両方をイメージしながら作成、修正、更新していくことになります。
最初から及第点ラインを超える要素でかためてウェブサイトを作れる人は、ほとんどいません。こればかりは日々、アクセス解析や電話・メールでの反応などをベースに、運用しながら試行錯誤して模索していくしかありません。
しかし、及第点ラインを超える方法というのは、日々のトライアンドエラーの繰り返しで学習可能なものです。ですから、このライン超えに一度慣れてしまうと、あとは的外れのウェブサイトを作る危険というのはほとんど無くなります。このあたりは、一度補助輪なしの自転車に乗れるようになると、あとはなんとかなってしまう感覚に似ています。
公開するウェブサイト、公開するウェブサイト、それなりの反応をたたき出している士業事務所さんというのは、もうこのあたりの感覚が染み渡っていて、自然とできる状態にあります。
ウェブサイトに手を入れて改善するときは、どの要素に手を入れたことで、どんな風に反応が変わって、結果としてどうなったのか(良くなったのか悪くなったのか)、あまり短絡的に捉えすぎず、中期的な視野で要素ごとに確認してけば、及第点ライン達成のスキルが次第に磨かれていくはずです。
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