士業事務所が営業手段として活用できるツールは、事務所ウェブサイト(ホームページ)、業務特化型ウェブサイト、スタッフブログ、そして最近はFacebookやTwitter、InstagramなどのSNSと多岐にわたります。
これらを定期的に運営していく上では、まず「コンスタントな更新」が基本となるので、できるかぎり短いスパンで更新を試みている士業事務所さんもいらっしゃると思います。
ウェブサイトに限ると、どれだけウェブサイトの訪問者に対して的確かつ便利な情報を提供しているか(し続けているか)が、検索結果への反映では重視される傾向が強まっています。
従って、できるだけウェブサイトを更新して動かす、生きているウェブサイトであることをアピールしていくことは重要です。
しかし、新たなコンテンツを追加することだけが日課になってしまうと、しだいにそれ自体が目的化してしまい、ウェブサイト本来の目的から逸れ、数ヶ月後、1年後には本末転倒の事態に陥らないとも限りません。というよりも、この事態に陥っているウェブサイトは比較的多いです。
士業事務所のウェブサイトで取り入れたいルーチンワーク
そこで、新たなコンテンツの(半ば無理矢理の)追加のみに注力するのではなく、記事追加の前に、当該ウェブサイトが間違った方向に進んでいないか、チェックする作業を取り入れてルーチンワーク化していきましょう。
具体的には、ウェブサイトに新しい記事を追加する前に、以下のような作業を組み込みます。毎日、何を確認したらいいのかよくわからないという方は、参考までにざっと目を通してみてください。
- アクセス解析の推移
- 検索語句で検索結果に表示される競合ウェブサイト
- 主とする検索語句の検索結果での順位変動
- 受電やメールに繋がった訪問者の動き
- 数週間前に追加したコンテンツ(記事)の見直し
- リスティング広告の状況(競合確認含む)
並べてしまうと、やけに作業量が多く感じられるかもしれません。また慣れないうちは時間がかかってしまうかもしれません。
が、これらの作業をコンテンツの追加前に行うことによって、日々ウェブサイトの軌道修正が図りやすくなります。
以下、わかりやすいようにA、B、Cで重要度を表示しますが、Aはできるだけ毎日確認したいもの、Bは数日に一度は確認したいもの、Cは1ヶ月に1度は確認したいもの、という区分です。
1.アクセス解析の推移(B)
アクセス解析の画面ですが、可能ならパソコン画面上に常時表示したままにしておくのがおすすめです。そして、最初から詳細なデータを比較検討することは難しいので、慣れないうちは訪問者の数がどのくらいなのか、先週や先月と比較してどのような動きを見せているか、なんとなく見ておく程度で構いません。
特にウェブサイトの立ち上げ当初は、昨日より数人増えた!とか先週より数十人増えた!と一喜一憂しても、その時々でばらつきが激しいためあまり意味がありません。むしろ増えた減ったを気にしすぎると、更新のモチベーション低下にもつながりかねない危険があります。
とはいっても、全然アクセス解析を確認しないのに比べれば、数日に1回、なんとなくでも見ておくほうが、アクセスの推移や管理画面自体に慣れることができます。まずは適度な軽い感覚での確認がおすすめです。
2.検索語句で検索結果に表示される競合ウェブサイト(B)
競合ウェブサイトの確認。まずアクセス解析を見ると、誰かが検索して実際に訪問した際の検索語句が確認可能です(最近はGoogle Analyticsではほとんど検索語句を拾えないので、Search Consoleも併用して語句を確認するほうがよいです)。
そして、その検索語句で実際にGoogleを使って検索しなおしてみて、そのとき、どのような競合ウェブサイトが検索結果に並ぶのか、そして貴事務所のウェブサイトはその中でどのように映るのか、自らの目で確認します。
アクセスのデータとして検索語句だけ見ていると、「ああ、こういう検索語句でも探す人がいるんだな」ということには気づきますが、その検索語句で検索した結果が、どのような状況になっているのかはわかりません。
言い換えるなら、訪問者がどのような道程を辿って、どんな風景を見てあなたの事務所のウェブサイトに立ち寄ってくれたのかがわかりません。
自分であらためてその検索語句を入力して検索結果を表示させることで、そこに表示される競合と比較して、あなたの事務所の検索サイトでの表示(記事タイトルやディスクリプション(説明文))は目立つのか目立たないのか、何ページ目に表示されているのか、競合サイトと比較して抽象的でわかりにくいタイトルになっていないか、などがより具体的に把握できるようになります。
また同時に、日々訪問者が検索サイトに打ち込むキーワードというのは、かなりニッチでマイナーな単語の組み合わせの場合も多いです。
そのような検索語句で実際に検索してみると、他に検索結果に並んでいるウェブサイトはそのこと自体に触れておらず、貴事務所のみ思わぬ入口(ウェブサイトにより訪問者を増やせる手段)を発見する可能性も十分ありえます。
3.主とする検索語句の検索結果の順位変動(C)
「この単語の組み合わせなら、依頼に繋がる可能性が高いだろう」と感覚がつかめてきたら、その語句を検索サイトで調べた際、あなたの事務所が何番目(何ページ目)の順位に表示されているか確認する作業です。
おそらく今回挙げているルーチンワークの中では、この検索結果の順位変動は一番捕らわれやすい(取り憑かれやすい)項目です。「先週より1ページ前に表示された!」とか「突如、圏外に吹き飛ばされた!」といった状況を確認して、飛び跳ねたり暗く沈んだりするアレのことです。
確かに主要な検索語句での上位表示は、受任に至る率を高める可能性を秘めるものなので魅力的に映ります。しかし、ここにこだわりすぎてしまうと、検索順位の変動に振り回され、結果、長い目で見るとマイナスにしかならないSEO対策をいくつも短期的に施してしまう危険性が非常に高いです。
重要な検索語句の順位変動は、状況確認のパラメータの一つとして機能しますから、無駄とは言いません。また、1番目に触れたアクセス解析上の訪問者が突如大幅に増えたとか、減ったという場合には、主要な検索語句の順位変動はまず確認してみるほうがよいでしょう。
ですが、これはルーチンワークとして取り入れ過ぎている事務所さんが多いので、アクセスが特異な状況に陥っているのでなければ月に1、2回程度に留めてしまってもよいと思います。
それよりも、日々のルーチンワークでは2番目に触れた個別の検索語句による検索結果の表示と、本当の入口ページの充実が大事です。
ある一つの主要ワードに捕らわれてしまったり、トップページの改修のみにこだわってしまうことは、実際の訪問者の動きを無視した意味のない改修に至りがちです。
4.受電やメールに繋がった訪問者の動き(A)
導入しているアクセス解析ツールによっては、訪問者がどのページから訪問し、どのページを辿って最終的なお問い合わせフォームにたどり着いたのか、簡単に把握できる仕組みのものがあります。
この仕組み(アクセス解析の機能)を使って、お問い合わせに至った人がどのような検索語句でたどり着いたのか、しっかり確認し、その検索語句はノートなどに控えておくべきです。
他の検索語句と比較して、実際にお問い合わせに繋がった検索語句ですから、それを利用して新たなコンテンツを追加できないか、検討する大事な参考資料となります。
最近は検索語句の確認までなかなかできないことが多いので、その場合は訪問者の動きを確認して、電話やメールのアクションを起こしてくれた人がどのような順番でページを移動していったのか、確認することでも気づきを得られます。
この点、では受電の場合は最終的なアクションがアクセス解析から把握できず、さかのぼることができないのではないか?と思われるかもしれません。実際そのとおりなのですが、たとえばGoogleのリアルタイム解析を画面上に常時表示させておくことで、電話をかけてくれた方がどんな検索語句で訪問されたのかは、結構高い頻度で把握ができます。
理由は、ウェブサイトを画面に表示させながら電話をかけてくる方が多いこと、また士業のウェブサイトに限っては、リアルタイムでそのとき100人以上がアクセスしているといった状況は稀であり、たとえ数人のアクセスが重複しているときでも、電話の内容からどの訪問者なのか絞ることは比較的容易だからです。
また、最近ではスマートフォンからの問合せ比率も高まっています。スマートフォン用の電話発信ボタンがクリックされたら、コンバージョンとしてアクセス解析に記録されるような仕組みを用意すれば、問合せをしてくれた訪問者の動向は比較的正確に把握することができます。
5.数週間前に追加したコンテンツ(記事)の見直し(A)
新たなコンテンツ(記事)を追加する前に、ちょうど1ヶ月前くらいに更新したコンテンツを再度読み直してみて、おかしな表現や至らない説明などを直します。
1ヶ月も経過すると、自分で書いたコンテンツでもかなり客観的に見ることができるため、わかりにくい言い回しや思い込み、勘違い、そして誤字や脱字などに気づきます。
この客観的な見直し作業の方法はもう1つあります。アクセス解析でリアルタイムの項目を見ていると、いま実際に訪問者が読んでいるページが把握できます。
そのとき、そのページを同時進行でご自身でも読んでみることはコンテンツ改善にかなり役立ちます。「いま、読まれている!」という緊張感を持ってコンテンツ(記事)を見返すと、至らない表現や依頼に繋がりにくい表現が、目に強く飛び込んでくることが多いからです。
6.リスティング広告の状況(競合確認含む)(B)
リスティング広告(PPC広告)を活用されている事務所さんなら、広告文、キーワードでどのような反応が出ているのか、できるだけコンスタントに目を通したほうが状況改善に繋がります。
この作業、慣れないうちは重要度Aとして、毎日覗いてみるくらいでちょうどよいと思います。ただし、この場合も検索順位のチェックと同様、その日その日のデータ上下動に振り回されて、すぐ手を入れて変貌させすぎないよう注意してください。
クリック単価など細かな調整はその都度行うにしても、データはある程度溜まらないと、具体的な修正点が浮き立ってきません。
また、リスティング広告の管理画面だけでなく、実際の検索結果に表示される競合事務所のリスティング広告も、あなたの事務所の広告と比較対象しながら確認しておくと、様々な修正のヒントが得られます。
コンテンツの追加(A)
そして最後に、上記の状況をひととおり確認した後、あなたの事務所のウェブサイトへコンテンツ(記事)の追加を行うことになります。
目的が主であり、手段は従であることを忘れずに
これらの手順を踏まえておくと、「こんなコンテンツなら反応がありそうだ」「このようなコンテンツを追加する予定だったが、アクセス解析のデータからはあまり意味がないかもしれない」という判断の下、新たなコンテンツを追加できるので有意義です。
これらはすべて、何のために、どの部分を強化することで、どのような目的を達するのかという士業ウェブサイト活用の基本的な考え方に沿って行います。
たとえば主要な検索語句で上位表示を目指すのは、依頼に繋がりやすい訪問者を呼び、最終的な反応率の上昇を目的としているはずです。
であるなら、手段は主要な検索語句の順位上昇に限られないわけですから、順位上昇のために小さな修正を延々と繰り返すよりも、同様の目的を達成できる別の手段はないか、より簡易で効果的な手段はないか、考えて実践するほうが近道の場合も多いのです。
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