「検索順位さえ上昇すれば、依頼が増える」という固定概念と並んで、士業ホームページ(ウェブサイト)を運営していく上で捕らわれてしまうのが「訪問者さえもっと増えれば、依頼が増える」という意識です。
士業ホームページの訪問者と反応率(依頼数)のイメージ
ウェブ営業に関する情報がネットからも書籍からも容易に入手しやすくなった昨今、さすがに訪問者が増えれば比例して依頼の数も増えると短絡的に考える方は減っているようです。
しかし情報として「訪問者と依頼数は比例するわけではない」と知っていても、単なるアクセス増が事務所運営上どのような問題を引き起こしやすく、どんな場面で誤った決断を下してしまいがちなのか、具体的なイメージとして思い描けている方はまだまだ少ないのではないでしょうか。
そこで、このページではウェブ上を移動する検索者の動きを川の流れにたとえて、ウェブサイトの入口を水門とした具体的なイメージに置き換えた説明を試みてみたいと思います。
ホームページの訪問者も反応も少ない状態
まずホームページの訪問者が少ない状況は、ウェブ上の川の流れ(検索者の移動)に対して、あなたの事務所のウェブサイトへ支流として引き込むための水門(入口)が小さいという状態です。
ここでは便宜上、簡単な数字で説明します。まず水門が小さな状態では毎日11の流れ(訪問者)を支流から事務所のウェブサイトへ引き込んでいる状態だとします。
そして、川の流れには潜在顧客である濃い流れの部分と、そうではない薄い流れの部分が存在しています。
上の図では水門が小さいだけでなく、それを設置する場所が潜在顧客の流れとずれているため、11の流れのうち10は顧客にはなりえない(何らかの知識を求めているだけとか、多数の事務所に電話だけして細切れに知識を収集して自己解決を図っているとか、あるいは全く異なる知識を調べている過程でたまたま水門に入ってしまったという)流れであり、1だけが潜在顧客の流れという状況にいたっています。
これが、ウェブサイト訪問者が少ない上に、その中での反応率も低い状態のウェブサイトのイメージになります。
ホームページの訪問者は増えたが、反応率はそれほど増えなかった状態
前述の1のような状態において、冒頭で述べた「訪問者さえもっと増えれば、依頼が増えるのはずだ」との考えの下、士業事務所で水門の拡張工事に取り組んだとします。
すると、大抵のケースでは潜在顧客の流れを意識せずに水門だけ広げてしまうため、状況は下図のように変わることになります。
この状態においては、全体で22の流れのうち2の流れが潜在顧客ですから、水門が小さく1しか取り込めていなかった図1と比較すれば、倍の数、反応は得られる状況ともいえます。
どちらの流れからもアクションが起こる
さて、これから士業事務所にウェブ営業を取り入れるにあたって、とても大事なことに触れていきます。
水門を設置して支流としてウェブサイトへ誘導した訪問者は、その訪問した先のウェブサイトの作りによって、ある程度の反応(電話問い合わせだったり、メール問い合わせだったり)を起こすことになりますが、ここでは仮に、その率をわかりやすく訪問者の1割に設定して話を続けましょう。
図1の状況、つまり11の流れを引き込んでいた状況においては、潜在顧客ではない流れが1日あたり10生じていますから、おおよそ1日に1件、電話問い合わせかメール問い合わせが生じることになります。
これは潜在顧客ではない流れですから、その問い合わせ内容も依頼が前提ではなく、何か疑問に思っていることを解決するためちょっと聞いてみたかったとか、あるいは勘違いして業務とは関係のない質問をしてきたというものになります。
一方、潜在顧客となりうる流れは1日あたり1だけですから、10日に1回くらいの頻度で依頼に繋がる問い合わせが入る状態といえます。
そうすると、大ざっぱに言ってしまえば1ヶ月(30日)のうち、士業事務所は依頼に繋がらない約30件の問い合わせや相談、場合によっては事前確認や資料を調べての回答などに対応し、また同時に依頼に繋がる約3件の問い合わせに対応することになります。
士業事務所の状況によっては水門拡張が不可能の事態に陥る
ここで気をつけたいのが、各士業事務所は士業さん自身の事務処理能力や事務所の効率化、スタッフの多寡によって、新規案件に割ける余力に違いがあるという点です。
たとえば図1の状態で、あなたの事務所の処理能力が現状、ウェブからの問い合わせに対して1ヶ月33件程度であれば、何とか捌ききれるものであるとしたらどうでしょうか。
小さな水門の段階で、既に月あたり33の問い合わせや相談を抱える状態に至っているため、受任率の低い状況の中、忙しさばかりが募っていくことになります。
結果、水門拡張(ウェブサイトの入口の改善)やウェブサイトの反応率修正までは手が回らない事態に陥ってしまいます。それ以前に、「ウェブ営業は効率が悪いから、いったんウェブサイトの公開は止めることにしよう」という決断を下すことにもなるでしょう。
処理能力や規模によって誤った決断を下す可能性がある
この点、仮にあなたの事務所の処理能力が高かったり、雇用している優秀なスタッフがいることから、前述の事務所の倍である1ヶ月66件の新規対応が可能だったとしても、安心というわけではありません。
なぜなら、図1のように月33件しか取れていない状態では「なんだかウェブからの集客が少ないなあ。あと倍は反応があっても全然いけるのに」という感想を抱いてしまい、水門の拡張を図ることが優先されてしまうからです。
冒頭で触れた 「訪問者さえもっと増えれば、依頼が増える」という思いから、入口だけを拡張し、まずは訪問者を増やしてしまう決断を下しがちなのは、実はこのように士業事務所側の処理能力の余剰(余裕)が要因となることも多いのです。
その結果、図2のように、1日あたり22の流れを呼ぶ倍の水門へ安易に拡張することにつながり、結果として事務所のキャパシティオーバーとなり、結局は「ウェブ営業は効率が悪い」との決断に繋がってしまいます。
潜在顧客の層に近づけて水門を設置することが原則
このように「まず訪問者を増やせばよい」という考え方は、ウェブ営業の非効率化を招きやすく、それ自体がウェブ上からの撤退を促す要因になりかねません。
ウェブサイトを制作する上では訪問者の数よりも、どのような水質の流れを引いてくるのか(この記事でいえば、どこに最初の水門を設置するのか)の検討が、とても大事です。
水門設置の位置さえ見誤らなければ、訪問者の数はそれほど多くなくても、期待以上の反応を得ることも十分ありえます。
そして、あなたの事務所にまだウェブから新規の依頼を受け入れる余力があり、水門拡張を計画するのであれば、ただ闇雲に門だけ大きくするのでは状況は改善しません。
上の図3のように、潜在顧客の層に近づくよう調整して門を広げられるように、アクセス解析や修正ログなど蓄積したデータを活用して対策を練る必要があります。
潜在顧客に寄った入口の設置と作業効率化、そして反応率の調整
今回の記事内容をまとめると、次のようになります。
- 士業ホームページの訪問者は増やせばよいというものではない
- 潜在顧客の流れに近づけて、ウェブサイトの入口を調整配置する
- 入口を拡張して訪問者を増やす前に、事務所内の作業効率化を検討する
- ホームページ内での反応率調整にも気を配る
この4つの点を意識しながら士業事務所のウェブ営業を展開していくと、途中で効率の悪さから諦めてしまう事態を防ぎやすくなります。
これらは当たり前といえば当たり前のことなのですが、改善するときに誤った判断をしにくくなるため、流れや入口をイメージとして思い描いておくことは意外と役立つはずです。
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