士業のウェブサイト(ホームページ)も他の業種と同様に、まずは対象者(ターゲット)と対象エリアを明確にして、最終的なゴールを確定させてから制作に取りかかる必要があります。
これらが不確定な状態では、ウェブサイト内のコンテンツになにを用意すればいいのか判断しにくく、また全体的な流れや構造も悪くなってしまい、反応の乏しいものに仕上がってしまうためです。
今回は対象者と対象エリアのうち、前者の対象者(ウェブサイトのターゲット設定)について見ていきましょう。
ウェブサイトのターゲットの設定
ターゲットは広く設定するほど、対象者が増えるため依頼につながりやすいイメージを抱かれる方もいらっしゃるかもしれません。特に士業事務所の開業当初においては「とにかく依頼がほしい、誰でもいいから相談してほしい」といった感情によって、ターゲットを広く設定しすぎてしまうケースも多く見受けられます。
しかしウェブサイトから何らかのアクションを起こしてもらうために重要なのは、訪問者に共感してもらこと、興味や合致感(自分のことを言っているのだなと感じること)を持ってもらうことです。
何か困りごとがあったとき、まずはウェブで調べることが当たり前となりました。その際、競合するウェブサイトを多数比較することもまた当たり前の状況に至っていることから、共感や合致感の重要性は、より高まるばかりです。
ここで仮に、ウェブサイトのターゲットとして100人の訪問者中100人全員を対象に設定しようと試みた場合、そのウェブサイトの構造や内容はそれだけ抽象的、一般的になものになってしまうことから、サイトに訪問した人にとっては印象の薄いウェブサイトになります。
これでは、共感や興味、合致感を抱いてもらいにくく、結果として反応率も乏しくなってしまうでしょう。前述のとおり、競合するウェブサイトを複数、ブラウザのタブで開いて検討することが当たり前となった現在、印象の薄いウェブサイトでは最初にタブを閉じられてしまう可能性が非常に高まります。
そこでターゲットをしっかり設定して、100人のうち1人は絶対に共感を得てもらう、まさに自分のことを言っているのだという合致感を持ってもらうことが重要になってきます(これは極端な例なので、実際は100人中数人は反応する、くらいの範囲で設定すると思いますが)。
ペルソナの設定
ターゲットを明確にする上で、よく行われる作業がペルソナの設定です。
これは、性別や年代だけでなく、どんな家族構成で何の仕事をしているのか、就業時間は何時から何時までで、休日は何曜日なのか、パソコンやスマホの利用歴やスキルはどれくらいなのか、ターゲットとする人物を細かく設定していく作業です。
ペルソナ設定はより詳細に行うものですが、ここでは最低限の内容に簡略化した「より具体的な人物像」として話を続けます。
「なんとなく、こんな人」というイメージではウェブサイトの構造やコンテンツ、最終的なアクションへの導線を作るために迷いが生じてしまいます。そのため、より具体的な人物像としてできるだけ具体的な人物像を作ってしまい、その人に向けて情報を発信するイメージで取り組んでいく必要があります。
設定した人物像に向けたウェブサイトの構築
ターゲットとする層のごく基本的な要素、たとえば性別や年齢に関しては、全体的な色や雰囲気を決める際に参考となります。
また年齢層は、ウェブサイトの文字のサイズを決めるときにも関わってきます。文字は小さめのほうがウェブサイトのデザインとして綺麗な印象を与えることが多いので、ついつい小さめの文字をしてしまう士業さんも多くいらっしゃいます。
しかし士業のウェブサイトに関しては、
- 多忙な訪問者が少しの空き時間で目を通すことが多い
- 比較的年齢層が高い訪問者が多い
という主に2つの理由から、文字サイズは大きめに設定するほうがベターなことが多いです。この辺は士業さんの好みより、訪問者の利便性を優先させたほうがよい要素となります。
より細かなターゲット設定が差別化につながる
性別や年齢層は、どの事務所のどのウェブサイトでも、設定をある程度絞ってくる要素です。競合ウェブサイト同士の差別化という面では機能しにくいことのほうが多いかもしれません。
そこで、さらに掘り下げて人物像の設定を行っていきます。
この作業によって、思わぬところに反応率を挙げるキーワードが眠っていることに気づかされたり、場合によってはウェブサイト全体の作りを見直すきっかけが与えられることも多くあるためです。
ターゲット層の就業時間や休日を設定する
たとえば、就業時間や休日を考えることで、平日の日中には相談する時間がとれない層に対してサービスを提供していることに気づくかもしれません。このような場合は、士業側事務所の電話受付時間を延長できないか、あるいは土日対応も可能である旨をどこかに配置できないか、などを検討することになります。
また就業時間や休日というのは、ウェブサイトだけではなくリスティング広告を展開させる主要時間の確定にも影響してくる大事な要素です。(ここでは話が逸れるため省略します)
さらに具体的な人物像に家族構成を考えることで、士業側の提供しているサービスが、実は本人以外が検索する可能性が多いかもしれないことに気づく可能性もありますね。
このような場合、最初に設定した年齢層より一世代上か下が、主として設定すべきターゲットとして浮かび上がってくることになります。
パソコンやスマホの利用頻度や使用歴を設定する
この設定はウェブサイトを用いた営業を行う上では、必須中の必須事項といえます。ターゲットとする層がパソコンの使用に比較的長けている(ITリテラシーが高い)のか、それともパソコンでかろうじて検索できる程度なのかによって、ウェブサイトの構造やコンテンツの作りを大きく変える必要があるからです。
たとえばパソコンの使用に不慣れな人に対して、長文・多量のコンテンツを用意しても、閲覧されない可能性が高まります。
同様に、スマートフォンの利用者が多いか否かを設定することで、パソコン用ウェブサイトだけでなくスマートフォン専用ウェブサイトを用意したり、どちらにも対応可能なレスポンシブデザインで制作したりといった選択を取るべきかが判断できるようになります。
たとえば、毎日現場に出ている職業の人や、家事育児に忙しい主婦(主夫)の人は、隙間時間を利用してスマートフォンでアクセスしてくる可能性がかなり高いです。もしそのような層をターゲットに設定してウェブサイトを制作するのであれば、モバイルファースト(まずパソコンではなくスマホありきで制作する)も要検討ということになります。
そしてモバイル機器をターゲットにした場合、ウェブサイトにある多数のページをリンクで行き来させるよりも、1つのページでだいたいの内容が把握できるような構造のほうが、より反応率が上がる可能性も考えられます。
サイト全体の構造も、対象者によって異なってくるわけです。
広げることで生じるデメリットと、絞ることで方向性が具体化するメリット
以上のように、ウェブサイトを制作する前に対象とするターゲットをより具体化することで、ウェブサイトの構築にブレが少なくなり、また競合ウェブサイトとの差別化要素に気づけるようにもなります。
逆にターゲット・人物像が曖昧なまま一度ウェブサイトが完成してしまうと、ターゲティングはウェブサイトの根本的な部分に関係する要素が多く、前述のようにサイト全体の構造にも影響することから、修正で対応することが困難です。妙な言い方で締めることになりますが、
「ウェブサイトは机上の空論(ちょっと言葉の意味が違いますが)を展開させたその後、想像にほとんど広がりがなくなってから作り始める」
そのくらい準備段階であれこれと想像し、時間をかけておくほうが、結果として長い間第一線で活躍してくれる営業ツールに育ちます。
ちなみにこの作業、事務机に向かって厳粛に行うよりも、喫茶店やファミレスなどで紙に書き出して考えるほうが、連鎖して思い浮かぶ項目も増えることが多いのでおすすめです。パソコンの前に座って作業してしまうと、どうしてもより具体的な、ウェブサイトのコンテンツを生み出す作業に意識が傾いてしまいがちですから。
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