意外とよく耳にするこのセリフ、「ホームページ作ったけど、変なお客さんしか来ないよ」。
ここで言うところの変なお客さんというのが何を指すのかは、発言者によってかなり幅がありそうです。
が、大抵の場合は以下のいずれかに当てはまるのではないでしょうか。(ひとまずここでは、お客さんのことを「変」ということの是非は置いておきます)
- 延々とタダで情報を聞き出そうとする人
- マニアックすぎる相談をしてくる人
- 柄の悪い人
「変なお客さん」とひとまとまりに相手方の要素として会話に出てきがちですが、士業事務所の側から言い換えるなら「時間や手間がかかりすぎる(あるいは時間や手間ばかり取られ、依頼にはまず至らない)相談者」といったところでしょうか。
ホームページは相談して欲しい対象者に向けて発信する
電話が鳴っても、鳴っても、質問ばかりで依頼に至らない。マニアック(レア)すぎて、即答できない相談ばかりが連続する。横柄な物言いの電話ばかりがかかってくる。
このような状況が発生しているときは、お客さんの側に何か問題があるのではなく、原因はほぼウェブサイトの作り方にあります。
相談して欲しい対象者に向けて適切に情報発信しなければ、的外れの電話やメールばかり増えるのは当然です。
よく起こりうる典型的なパターンは、以下の3つです。心当たりのある方は、このあたりから手を付けて修正すれば、状況はだいぶ改善するはずです。
1.用意しているコンテンツがずれている
士業事務所でホームページ(ウェブサイト)を設置するのは、パンフレット代わりのコーポレートサイトを除けば大抵の場合、集客のためですよね。であれば、業務との関連度が高いページから、ウェブサイトにコンテンツとして増やしていく必要があります。
ところが、(特にその業務の経験が少ないほど)自分自身の体験をコンテンツ化することが難しいため、つい手引きやガイドブックの内容を言い換えるかたちでページを作ってしまいます。結果として、用語解説的な記事が増殖してしまうことになります。
手引きやガイドブックの焼き直しのほうが、記事を書くのが楽だし短時間で済むから、という理由もありそうですね。
これらは「何々とは」というタイトルで終わることが多いため、ここではひとまず「とは系」と呼んで話を進めます。「公正証書遺言とは」「設立総会とは」「法務局の管轄とは」「助成金とは」「少額訴訟とは」などが、「とは系」ページの例です。
これらは基本的な用語を説明するものであり、決して訪問者に無益というわけではありません。
しかし、営業用ウェブサイトを計画しているにもかかわらず、開設当初にこういった記事から増やしてしまうと、Googleなどの検索エンジンがそのウェブサイトを基本用語を説明するウェブサイトとして認識し、「とは系」ばかりが上位表示される事態に陥りがちなのです。
現状把握と対策
アクセスが多いのに、お問い合わせの電話やメールには繋がらない。「とは系」記事の増加は、そういった状況の要因の一つです。
あるいは、電話は鳴るものの、基本的、ごく一般的質問電話ばかりが多い。そのようなときは、アクセス解析を確認して、「とは系」のコンテンツばかりにアクセスが集中していないかどうかを確認してください。
もし「とは系」記事ばかりがアクセスランキングの上位に来るようなら、残念ながら、既にウェブサイトは営業向きではなくなっています。
対策は、「とは系」記事の比率を下げ(多くの場合、「とは系」記事を削除せず、新たな記事を増やすほうが無難です)、営業用ウェブサイトの性格を強く打ち出す(※)ことです。
(※ただし営業用ウェブサイトの性格を打ち出すといっても、「お任せください!」と押し売りすることではありません)
従って、この対策はウェブサイト全体の見直しや多数のコンテンツ追加・修正が求められるため、片手間に行うのは難しいです。というよりも、一度「とは系」としてウェブ上で認識されてしまうと、その方向性を変えることはかなりの労力が必要になります。
※「とは系」記事については、「依頼に繋らない「手引き型」士業ウェブサイトの問題点と改善方法」でも触れています。
2.お問い合わせ直前の文章で対象を広げすぎている
お問い合わせが電話なら、電話番号の前に記載している文章。お問い合わせがメールなら、メールフォームの直前に記載している文章。ここで対象を広げすぎているために、質問電話ばかりという事態に陥ることも多々あります。
電話を切った後、「ここは役所じゃあないんだけどな?」「ウチはいつから、なんでも相談センターになったんだ?」と思ったことのある士業さん、原因は大抵ここにあります。
現状把握と対策
現状把握と対策は容易です。電話番号やメールフォームの直前に、
- 「どんな些細なお困りごとでも、お気軽にご相談ください」
- 「〇〇のことなら、お悩み何でもご相談ください」
- 「ご相談は無料、いつでもお問い合わせください」
といった文言で誘導しているなら、ほぼここです。
従って、対策としてはこの部分の対象者を絞るようにします。
「〇〇について、代行サービスをご希望の方は、お電話ください」などが、絞る際の例になります。
3.ホームページのデザインが大手感、または公共機関の雰囲気を出し過ぎている
実はこれが一番の要因かもしれません。
あなたのホームページ(ウェブサイト)は、綺麗に作りたいとか小さな事務所だと思われたくないという理由から、大手感(従業員多数の大きな事務所の雰囲気)のあるデザインになっていませんか?あるいは、公共機関が運営しているような、誰もが相談電話をかけてよい雰囲気が出ていませんか?
ウェブサイトを制作業者に依頼した場合、ウェブサイト制作業者は、訪問者の対象を的確に絞ることではなく、発注者(つまり士業さん)自体を満足させる方向でデザインを組む場合が多いです。理由は納品する際、以下のように気持ちよく検品してもらえるからです。
「どうです?綺麗なサイトが出来上がったでしょ?」
「ええ、本当に!しっかりしたホームページが出来あがって安心だ。プロに任せて良かった!」
しかし士業さんが気分良くなったとしても、それは一時的なものであり、大手感が出てしまったことで後日に弊害が生じていきます。
訪問した人に、
「ここなら多人数で運営しているだろうし、自分1人が相談の電話をかけても迷惑にはならないだろう」
「自分がちょっと無理を言っても、目立つことはないだろう」
という意識を与えてしまい、結果として質問だけの電話が増加するというパターンに陥ってしまうからです。
また、用意しているコンテンツ(つまり依頼してもらいたい業務)よりも高度な質問・依頼の電話が多くかかってくる原因も、この大手感にあることが多いのです。
「うち、そこまで専門的かつニッチな質問をされても、すぐには答えられないのですが・・・」といった症状が出ている士業さん、いませんか。
現状把握と対策
実際は1人事務所であるにも関わらず、過剰に大手感が演出されているデザインであれば、それをスケールダウンさせることで、質問ばかりで終わってしまう電話を減らせます。
このような状況を改善するとき、私がよく使うフレーズは「ちょっぴりダサいくらいがちょうどいい」です。
綺麗なデザインを求めすぎると、結果として関係のない質問電話の比率が増えるということは、意識しておいてよいでしょう。
※ただし、逆に電話をしやすい効果を狙って「ちょいダサ」を狙う場合もあるので、デザイン面はサイト全体の方向性とも関係して一概ではありません。
柄の悪いお客さんへの対策
もうひとつ。「変」というのが「柄の悪いお客さんが多い」という場合。
柄の悪い系のお客さんは基本的に、可愛い系・ポップ系のデザインを好まない傾向があります(あくまで傾向なので絶対ではないです)。
従って、質問の電話が横柄な態度の人からばかりかかってくる、あるいは威圧的な態度の客層が多い、というのであれば、クールで洗練されて都会的・現代的なデザインでウェブサイトを組むよりも、ちょっと可愛い色味やキャラクター、ポップなデザインなどを採用してみると改善されることがよくあります。
ただし、サイト全体を可愛い感じにしつつ、隙が大きい新人の士業さんが運営している感が満載という雰囲気にしてしまうと、悪事へと巻き込まれるウェブサイトとなりかねませんので逆効果。この点は、業歴浅い士業さんほどご注意ください。
それでも、業種によってはどうしても客層が一定の方向に傾きがちなものもありますね。
であれば、目立つところに「当事務所は、不正行為の手助けになる行為は一切行いません」といった注意書きくらいは多少強めで、直接に打ち出しておきましょう。
「もっと、もっと安くなりませんか?」
最後にちょっとだけ。もし「変」の意味が「値切ってばかりくる」という客層だという場合は、安売り競争に巻き込まれて価格面ばかり強調している可能性が考えられます。
安さで選ぶ人はそこしか興味がありませんから、仕事の質よりも価格ばかり気にします。
そして、士業さんがいかに素晴らしい手際で業務を完了したとしても、より安い事務所を見つけてしまえば「高い事務所に頼んでしまった、なんだか損した」という感想に至り、リピーターにさえなってくれません。
安価な価格を売りにすること、ウェブ上の価格競争に参加することは、確実に顧客の質を落とします(並行して連鎖して、士業さんの仕事の質も落ちてしまいかねません)。
一つ前で触れた「柄の悪いお客さんばかり」という状況も、実は低価格路線が引き起こしているという可能性も、十分にありえます。
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